御嶽山三十八史跡巡りの王滝口霊場紹介、今回は「第十二番 大江権現」です。
王滝口霊場の紹介は、
王滝口第16番 王滝口頂上本社
王滝口第14番 中央不動
王滝口第13番 金剛童子と、
頂上から下りながら紹介しています。
大江権現の場所

「王滝口第十二番 大江権現」は王滝口登山道の7合目に位置しています。コースタイムは田の原登山口から登って約30分、金剛童子から下って約25分ほどです。


朱印帳記載文
大江権現は御嶽山座王権現三十八座の一座で、万物生成の力を持ち大地の母神である伊奘冉(いざなみ)尊を祭神とする。
朱印帳 御嶽山三十八史跡巡り より
かつて御嶽山は、女人禁制であった。軽精進登山が許された後も、大江権現が女性の結界とされ、女性はそこから上に登ることが許されなかった。女性が頂上へ登れるようになったのは、明治十年代以降のことである。
子授かりと縁結びにご利益があり、お札で奉納されている幣束から男の場合は金の幣束、女の場合は銀の幣束を借りて持ち帰り、成就したら同じ幣束を作って奉納するという慣わしがある。
この先岩場が多くなり、ここまで緩やかな登りであった登山道は次第に険しさを増していく。

要約すると、
- 大江権現は伊弉冊尊が祀られている
- 女人結界の場所であった
- 子授かりと縁結びの神さまであった
- 大江権現から先、登山道が険しくなる
という内容になっています。
大江権現の解説
イザナミは国産みの女神

イザナミの愛称である伊弉冊尊は、伊弉諾尊(イザナギ)と対である日本国産みの神さまですね。御嶽山の神霊軸の最上段に描かれています。

イザナミを大江権現と表現するのは、調べた限りでは御嶽山だけでした。

また、イザナギは金剛童子として黒沢口と王滝口の両方に祀られていますが、イザナミが祀られているのは王滝口の大江権現のみでした。

子授けの神と幣束とは

大江権現は子授かりと縁結びのご利益で祀られていますが、イザナミ自身は、出産が災いして死んでしまう運命でした。イザナギが、黄泉の国のイザナミに会いに行くという神話が残されています。ちなみにこの神話自体は、悲劇であり若干ホラーな内容です。興味のある方は調べてみてください。
幣束とは
お札で奉納されている幣束から男の場合は金の幣束、女の場合は銀の幣束を借りて持ち帰り、成就したら同じ幣束を作って奉納するという慣わしがある。
幣束とは、神社でよくみる白い紙の束だったり、紙をジグザグに切って木に挟んで立てかけられているお供物ものです。しめ縄に吊り下げられたりもしていますし、一度は見たことあると思います。

幣束は結界や、お供物、お祓いなどの意味があります。

大江権現では、金色の幣束は男の子、銀色の幣束が女の子を表し、授かりの祈願として持ち帰り、叶えば新たにお供えするという返礼作法があったみたいですね。

この返礼作法(恩返し)はいろいろな神社仏閣、パワースポットでよく使われています。
女人結界
そしてこの大江権現は、王滝口のかつての女人結界でありました。

登山道に大きな鳥居が架かっており、結界感が出ていると思います。

この大江権現のすぐ下った位置に御嶽山の遥拝所があります。
今でも登拝が厳しい人はそこから御嶽山を拝んでいます。かつての女性たちも、この場所から御嶽山を見るに留まっていたのかもしれません。
女人禁制や女人結界については女人結界の記事をご参照いただければと思います。
八大龍王尊

大江権現のお社です。今は幣束を供える慣習は消えています。左には高砂講の石碑が建っていました。(高砂講については初代・普寛講の痕跡①高砂講)

八大龍王尊も祀られていました。八大龍王尊は龍神であり水の神さまです。先ほども紹介した神霊軸にも描かれています。
神霊軸が気になる方はこちらの記事も読んでみてください。
現代の【神霊軸】一挙公開!

朱印帳にも書いてある通り、大江権現まではほぼ平坦だった登山道が、鳥居を抜けると徐々にキツくなっていきます。金剛童子までの小一時間は樹林帯のため、ガマンが必要な道のりです。
しかし、頑張りさえすれば!登らせてもらえる現代の御嶽山に感謝しましょう!
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