御嶽大神(おおかみ)大解説①の続きです。今回は、【御嶽大神】の三人の神さまをそれぞれ紹介したいと思います!
参考図像は、
①神霊軸(御嶽神社)②遥拝所(田の原)③火祭場(八丁ダルミ)の写真を使っています。
大己貴命(オオナムチノミコト)
以前、剣ヶ峰の記事でも紹介しましたが、
御嶽山で一番最初に祀られた神さまが
【大己貴命】と【少彦名命】です。
その後、室町時代の修験道最盛期に入り、【大己貴命】は【王権現】として祀られていました。【王権現】は三十八座のトップに立つ存在です。
このことから、まず【大己貴命】から紹介したいと思います。三神の中で一番右に位置しています。
「おお なむ ちの みこと
大 己 貴 命 」
【大己貴命】
別名:大国主命
神話『因幡の白兎』で有名
国造りの神さま(地上界)
医薬の神さま
出雲大社の代表
七福神の大黒天でもある
【大己貴命】は七福神のひとりである【大黒天】、いわゆる「大黒さま」と同じ扱いをされることが多いです。【大黒天】は七福神の中でも馴染み深く、恵比寿天や弁財天と並んで人気のある神さまです。
御嶽山では別々に祀られていますが、②遥拝所の大黒天と③火祭場の大己貴命の写真を比べると、持ち物が同じだと分かります。
小槌と大袋は大黒天のアイテムです。
このことから、御嶽山も【大己貴命】=【大黒天】だと意識しているのが分かります。
②遥拝所では、大黒天は【大己貴命】の横に並んで建っています。
ところで②遥拝所の【大己貴命】は、薬壺と剣を立てて持っています。これは①神霊軸も同じです。薬壺とは薬を入れている小さな蓋付きの壺で、よく薬師如来が持っています。【大己貴命】は医薬の神としても有名ですので(神話『因幡の白兎』でウサギを手当した話)、そのことから薬壺を持たせているのだと思いました。
【大己貴命】は黒沢口の御嶽神社若宮に単体でも祀られています。
ちなみに地上界を造ったのは【大己貴命】ですが、天上界を造ったのは【天照大御神】です。興味がある方は日本神話を検索してみてください。機会があれば私ももう少し詳しく書きたいと思っています。
少彦名命(スクナヒコナノミコト)
続いて【少彦名命】について説明します。三神の中で一番左に位置しています。
「すくな ひこ なの みこと
少 彦 名 命 」
【少彦名命】
国造りの際【大己貴命】に協力
【大己貴命】と対になることが多い
医薬、温泉、酒造の神さま
多彩な能力を持つ神
【大己貴命】に協力したことで知られる神さまなので、この二神を対にして祀る神社は日本に多くあります。御嶽山でも最初に祀られたのが、この【大己貴命】と【少彦名命】のペアです。
室町時代は、【少彦名命】は【日権現】として祀られていました。(もうひとつの十合目?王滝頂上!!)御嶽山のいわゆるトップ2という位置です。
①神霊軸と②遥拝所の描き方は同じですね。右手は剣の柄を持ち、左手には草の束を持っています。【少彦名命】も医薬の神さまなので、薬草という表現かもしれません。
③火祭場の【少彦名命】が何を持っているかが分かりませんでした。酒造りの神さまでもあるので左手に持っているのは酒瓶かもしれません。右腕には赤子を抱いてるように見えます。
【少彦名命】は黒沢口の御嶽神社里社に単体でも祀られています。
国常立尊(クニノトコタチノミコト)
最後に【国常立尊】を紹介します。
【国常立尊】は、中央に位置しています。
「くにの とこ たちの みこと
国 常 立 尊 」
【国常立尊】
「日本書紀」において最初に登場する神さま
日本の神々の最高位
天地万物の創造主
生命の起源
【普寛行者】が【御嶽山座王大権現】=【国常立尊】だと解釈したことで、御嶽山に名前を連ねるようになりました。つまり、三神の中では一番新しい存在と言えます。
①神霊軸と②遥拝所では背面に日の輪があり、両手を袖に隠して描かれています。
③火祭場の像は、やはり描かれ方が違いました。
まとめ
以下に年表を作ってみましたが、神さまは、名前が変わったり、姿が変わったり、合体したりとややこしいと思いました。
年号 | 大己貴命 | 少彦名命 | 国常立尊 |
774年 | ○ | ○ | × |
1507年頃 | ○ 王権現として | ○ 日権現として | × |
1792年以降 | × 一時消失 | × 一時消失 | ○ 座王権現として |
明治元年 | ○ | ○ | ○ |
少しは理解いただけたでしょうか?私もたまに書いてて混乱しています笑
【御嶽大神】の三神(国常立尊・ 大己貴命・少彦名尊)は、御嶽山以外でも神社でよく見る名前なので、探して見るのも面白いと思います。どこかの神社へ参拝したときに、「あ、御嶽山と同じ神さまだ!」と思うとより親近感が湧くでしょう!
参考文献:
「御嶽山王滝口 信仰資料拝見記」王滝口 御嶽神社/御嶽教滋賀大教会
「写真文集 神の山 御嶽」日本文化社
「朱印帳 御嶽山三十八史跡巡り」(木曽御嶽神社)
「木曽のおんたけさん」(執筆編集代表 菅原壽清)
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