もうひとつの十合目?王滝頂上!!

御嶽山の紹介

2025年明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。

昨年の最後には、御嶽山おんたけさん三十八史跡巡しせきめぐりの黒沢口最終番である「第二十二番 頂上奥社」を紹介しました。黒沢口霊場は、まだ山中さんちゅうしか紹介できておらず、まだ前半番号の山麓さんろく部を残しています。本年中に、全て紹介できるよう頑張ります!

新年は、まず【王滝頂上おうたきちょうじょう】をご紹介します。【王滝頂上おうたきちょうじょう】はその昔、御来光ごらいこうを拝んでいた場所です。新年を飾るにふさわしいですね。

十合目が2つある?

いきなりですが、御嶽山には十合目が2つあるんです。
さてそれはどこでしょう?

御嶽山の十合目といえばもちろん、最高峰3067mの剣ヶ峰ですよね。そしてこれまで八合目の女人堂にょにんどうや、九合目石室山荘いしむろさんそう、と主に黒沢登山道くろさわとざんどうを紹介してきました。

え?もう一つあるってどういうこと?

実は今回紹介するこの【王滝頂上おうたきちょうじょう】が、王滝登山道おうたきとざんどうのちょうど十合目にあたるんです。王滝登山道おうたきとざんどうは【普寛行者ふかんぎょうじゃ】が1792年に開いた道です。

拝殿と本殿、社務所があります

天保三年(1832年)に【国常立尊くにのとこたちのみこと】と【少彦名命すくなひこなのみこと】を祀る御嶽神社の奥社本宮おくしゃほんぐう建立こんりゅうされました。王滝口としてはこの奥社本宮おくしゃほんぐうを十合目として定めているんです。

御嶽山は【王滝おうたき口】と【黒沢くろさわ口】の二本柱でできています。
普寛行者ふかんぎょうじゃ】と【覚明行者かくめいぎょうじゃ】がそれぞれ登山道を開いて、二つの村は独自に発展していったので、御嶽神社おんたけじんじゃ里社さとしゃ里宮さとみや)が2つあり、2つの奥社おくしゃ奥宮おくみや)、そして【王滝頂上おうたきちょうじょう】と【剣ヶ峰けんがみね】という2つの頂上ができたというわけです。
王滝口黒沢口
開山普寛行者ふかんぎょうじゃ覚明行者かくめいぎょうじゃ
里宮
奥宮
十合目王滝頂上おうたきちょうじょう剣ヶ峰けんがみね

「◯合目」の意味とは?

登山をしていると、必ずと言って良いほど目にする「◯合目」という表記がありますよね。そして「十合目」が頂上を表しているということも、登山をしている人ならばわかると思います。

王滝頂上から見る剣ヶ峰

一合目とか二合目という言い方は富士山から始まった言い方なんです。人々は富士山を見て、「米を盛った形」だと考えたんですね。そこから頂上を一升いっしょう(十合)とし、高さを十等分して一合目、二合目と数えるようになったんだそうです。
ちなみに日本の山は、この「米を盛った形」や「笠を伏せた形」で表現されることが多いと思います。

王滝頂上の神さま

次に、【王滝頂上おうたきちょうじょう】に祀られている神さまについてご紹介します。
先ほども紹介した通り、1832年に建立された奥宮には【国常立尊くにのとこたちのみこと】と【少彦名命すくなひこなのみこと】が祀られていました。

現在はここに【大己貴命おおなむちのみこと】を加え、三神合わせた【御嶽大神おんたけおおかみ】として祀られています。

奥宮が建つ以前は、【日権現ひのごんげん】という名前でした。

日権現ひのごんげんは「沙汰の伝」に「日権現ひのごんげん少彦名命すくなひこなのみこと。神鏡御正体七面、西頂上岩屋座。)」とあるように、現在の王滝口頂上付近の岩座に祀られていたものであることが知られるが、その位置ははっきりしたことはわからない。この日権現ひのごんげんにおいて御来光を拝することがおこなわれ、日権現ひのごんげんの称号が生ずるに至ったものである。

「御嶽の信仰と登山の歴史」生駒勘七

上記のように、かつて【王滝頂上おうたきちょうじょう】には【日権現ひのごんげん】という名前で【少彦名命すくなひこなのみこと】が祀られていました。その名の通り、お日さまである太陽を意識して付けられた名前だと分かります。この【日権現ひのごんげん】は御嶽山座王権現おんたけさんざおうごんげん三十八座のうち7座を占めていて、百日潔斎で登っていた時代にはすでにその存在がありました。詳しくはこちらにも書いてます。権現ごんげんについてはこちらをご覧ください。

伊勢神宮を拝む場所

しかし、当時【日権現ひのごんげん】が祀られていた位置は、「西頂上の岩座」という書かれ方をしているので、現在の【王滝頂上おうたきちょうじょう】よりももっと西の位置かもしれません。【王滝頂上おうたきちょうじょう】は御嶽山では「南」で、「西」とは言えないからです。

日権現ひのごんげんは(中略)山上さんじょう霊気れいきに接し、雲海上うんかいじょうに差し登る荘巌そうごん御来光ごらいこうはいするとともに、遠く伊勢神宮いせじんぐう遥拝ようはいすることに始まり、後に西頂上に奉祀ほうしされるに至ったものであろう。

「御嶽の歴史」生駒勘七

ですが上記のように、御来光ごらいこうを拝んでいたこと、伊勢神宮いせじんぐう遥拝ようはいしていたことが書かれています。

雲海上に差昇る荘厳な御来光を待つ

御嶽山は南北にそびえる山なので、御来光ごらいこうを拝むには、どのピークからもそう見え方は変わりません。

王滝頂上から望む御来光

しかし【王滝頂上おうたきちょうじょう】は、御嶽山のピークの中では最も南に位置しているので、伊勢神宮いせじんぐう遥拝ようはいするには一番近い位置にあたります。そういう意味では、やはり【王滝頂上おうたきちょうじょう】は一番太陽を意識しやすい場所だったと言えるので、現在の位置が最も適しているでしょう。

まとめ

今回は少しややこしかったですね。
最後に【王滝頂上おうたきちょうじょう】のまとめを載せて終わります。

  1. 王滝登山道おうたきとざんどうの十合目である
  2. かつては【日権現ひのごんげん】(少彦名命すくなひこなのみこと)が祀られ、伊勢神宮を拝んでいた
  3. 1832年に奥宮が建ち【国常立尊くにのとこたちのみこと】と【少彦名命すくなひこなのみこと】が祀られた
  4. 現在は【御嶽大神おんたけおおかみ】(国常立尊くにのとこたちのみこと / 大己貴命おおなむちのみこと / 少彦名命すくなひこなのみこと)が祀られている
南方向

今度また【王滝頂上おうたきちょうじょう】へ登ったら、伊勢神宮いせじんぐうがある南西の方角を拝んでみようと思います!

「木曽御嶽山案内記 神鳥の声」和邇御嶽山
「御嶽の歴史」(生駒勘七)
「御嶽の信仰と登山の歴史」(生駒勘七)

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