2025年6月7日の土曜日に百間滝詣りへ随行した際の記録ですが、
こちらは[B面]と称して、私の個人的気持ちや出会ったみなさんとのふれあいを若干ミーハーに書き残した記録になります。
掛け念仏で六根清浄!
まず、今回の特筆すべきは、掛け念仏!
歩き始め、先頭の大鐘さんが掛け念仏を始めました。

♪さ〜んげさんげ
♬さ〜んげさんげ (懺悔懺悔)
♪ろっこ〜んしょ〜うじょう
♬ろっこ〜んしょ〜うじょう(六根清浄)

掛け念仏は、先達の言葉を後の者が復唱しながら歩き続けます。歩調や呼吸が慣れないと、とても苦しいものですが、リズムに慣れるととても心地よいものです。
大鐘先達の足取りは軽く、今日は調子がいいと話されていました。

これまで掛け念仏の存在は知っていましたが、まさか自分もそれに混ざれるとは思っていなかったので内心感激していました。
♪御山快晴〜 ♬御山快晴〜
♪登らせ給え〜 ♬登らせ給え〜
♪覚明さまよ〜 ♬覚明さまよ〜
♪引き上げ給え〜 ♬引き上げ給え〜
♪守り給え〜 ♬守り給え〜
♪懺悔懺悔〜 ♬懺悔懺悔〜
♪六根清浄〜 ♬六根清浄〜
道中の後半は、別の方に交代しましたが、それぞれの選ぶ言葉やイントネーションに違いがあって非常に面白いと思いました。

余談ですが、運動部が、ウォーミングアップなどで掛け声をしていたのを覚えています。私は運動部とは無縁でしたが、自衛隊では駆け足で「レンジャー呼称」という掛け声を発声しながら走ることがありました。最初に発声する者は非常に呼吸が苦しいですが、皆を鼓舞する重要な役割です。答える者たちも、呼吸を整えながらリズムに乗ってくると、自然と意識が高揚する不思議な効果があります。
掛け念仏も同じかなと思いました。違いといえば、掛け念仏は一人でもひたすら唱え続けることでしょうか?修験者は山に入る間、ひたすら念仏や真言を唱え続けると言います。自分との対話、自問自答の繰り返しでもあります。
掛け念仏では、修行の世界を少し覗けました。
修験者さんとのふれ合い
割と知らない人ともすぐに打ち解けられる性格でよかったと、こういう日は特に思いました。今回、大鐘さんも含めてほぼ全員初めてお会いした方たちでしたが、道中の合間にいろんな方とお話しでしました。
鬼頭祥寛さん
鬼頭祥寛さんという男性は、これまでSNSでお見かけしたことがあり、御嶽行者の中では有名な方だと分かりました。今回も鬼頭さんが来られることは聞いていたので、お会いするのを楽しみにしていました。
そしたらなんと、鬼頭さんの方から話しかけてくれました。
「ブログ、読んでますよ!」

「え〜めっちゃ嬉しい!どこで知ったんですか?どの記事が良かったですか?」
と、込み上げるのを抑えるのが大変でした笑
鬼頭さんは「私は小さい頃から御嶽山と関わっていたので、御嶽山に対して疑問を持たずに、そこにあって当然だと思っていました。(紋様や神仏などに対してこれと言った疑問を持たなかった。)松下さんのブログを読んで、改めて気づくことがあって面白いです。この調子で今後も続けてもらいたいです。楽しみにしています。」と話してくださいました。

まあなんてありがたいお言葉!純粋に御嶽山を信仰している方に受け入れてもらえるって、学者さんに褒められるより、めちゃくちゃ嬉しいですね。


鬼頭さんのリアルなお言葉は、私の原動力になります。私は御嶽山と出会ってまだまだ浅く、その位置にいるからこそ、御嶽山好き(オタク)ならではの視線で御嶽山を見ることができるのかなと思いました。
この鬼頭さん、立ち居振る舞いやひとつひとつの言葉がとてもお人柄を表していて、心地よかったです。身が引き締まりました。そして法螺貝がとても上手い。これまでも上手い人を幾人か見てきましたが、鬼頭さんは、音そのものがよい。心が現れているようです。
松「法螺貝めっちゃうまいですね」
鬼「ありがとう!けど松下さんも吹けるんでしょ?」
松「いやー私のはニセモノというか笑」
鬼「あとで吹かせてあげるよ」
松「いいんですか?!」
冗談だと思いきや、後で本当に吹かせてくれました!
大きい法螺貝吹くのはとても久しぶり!息が一瞬で無くなりましたが、たくさん音が出ました。法螺貝は大きいほどたくさんの音が出ます。正確には「管が長い方が音がたくさん出る」という意味で、これは法螺貝にかぎらず全ての管楽器に当てはまります。これは倍音効果というもので、私が持っている法螺貝のように管が短いと倍音は一つ(ド)しか鳴りませんが、修験者さんの法螺貝はとても大きいので、倍音が4つ(ドドソド)以上鳴るんです。つまり2オクターブ以上になります。
「もう一つ上の音もいけるよ!」
と言われ、さらに上の音が出たらみなさん拍手して喜んでくれました。
しばしみんなで法螺貝の吹きあいが続きました。

その後も、鬼頭さんは大鐘さんと交代で先頭を歩かれたので、たくさんお話しすることができました。鬼頭さんと大鐘さんは、小さい頃から御嶽山や山岳信仰が間近であったと話されました。お二人は境遇がとても似ているそうで、互いに親近感があると話していました。
戸塚智尚さん
「松下さん、山小屋ではお世話になりました」
と、にこやかに最初の自己紹介で私に話しかけてくれたのは、中津川にお住まいの男性でした。昔、山小屋で私の見送り演奏を聴いて下さっていた方でした。
そんな高野山真言宗の戸塚智尚さんの姿は、まさしく修験者!山吹色の鈴懸や結袈裟がとてもよく似合っていました。笑顔も素敵で、雰囲気がよく、話しやすい方でした。

戸塚さんは今回、途中で体調を崩されて、百間滝小屋に残る決断をされました。
「初めてこの場に来たらなら勢いで滝まで行ってしまっていたかもしれない。けどこの先の道がもっと危険があることを知ってるから、ここで皆の帰りを待とうと思います」
戸塚さんが百間滝へ行けないのは、本人の気持ちを思うと辛く、私もとても寂しく感じました。ですが、ここまで普通に歩いておられて、見た目も全然辛そうに見えなかっただけに、よっぽど耐え抜いていたのかと思うと立派だと思いました。
人間中々できないのが「勇気ある撤退」です。分かっていてもできません。撤退できずに悩む場面を自衛隊でもよく見てきました。さすが修験者は、自問自答のプロだと改めて思いました。

戸塚さんは、私たち一行が百間滝へ向かうのを見送り、滝に着いたのを見届けて法螺貝を高らかに鳴らしてくれました。やはり法螺貝もホルンの一種、戦いの合図や味方を鼓舞するのに使用されてきたのがよく実感できました。山と谷に一番よく届くのがホルン(法螺貝)なんです!
戸塚さんの法螺貝に、鬼頭さんが法螺貝で応えた姿は、なんだか感動してしまいました。

滝行から小屋へ戻った際も、戸塚さんが法螺貝で出迎えてくれました。戸塚さんのおかげで、ホルン(法螺貝)という楽器の真骨頂(あるべき姿)が見られたようです。
戸塚さんは朗らかに
「みなの滝行は遠くからでもよく見えたし、声もよく聞こえました」と話してくれました。
中村幸璋さん
その戸塚さんと、親しい間柄に見えるもう一人の男性がいました。埼玉県の摩利支天堂に勤める中村幸璋さん。戸塚さんとは、高野山修行の同期のようで、とても仲良しに見えて微笑ましかったです。同期ってよいなあといつも思います。苦楽を共にした仲間というのは宝ですよね。気が合えば尚更です。

中村さんは、美味しいお菓子もお裾分けしてくださいました(笑)


そして埼玉県の摩利支天堂といえば、とても重要な場所なんです。まだ当ブログでは紹介できていませんが、おそらく一心行者と盛心行者が関係する場所!これは今度ぜひ訪ねなくてはなりませんね。
それぞれ、修験者ではありますが格好や持ち物が違っていて、私は隙をみてはしげしげ観察していました。中村さんは金剛杖が珍しく、上部が八角柱で下部が円柱になっていました!


それぞれ金剛界と胎蔵界を表しているらしいです。円柱に焼印押すのは難しいだろうなあと、小屋番目線になりました。(金剛界と胎蔵界についてはこちら)
後述の“山と仏”さんの金剛杖も、四角柱で珍しかったです。

“山と仏”小雪童さん
もうひと方、高野山真言宗の方がおられて、なんとYouTuberの“山と仏”の小雪童さんさんでした!
私のことは火山マイスターのインスタで知ってくれていたようで、
「松下さんて火山マイスターのインスタを運営してる人?そうか〜繋がった〜!」
と親しげに話してくださいました。

この“山と仏”さんは、昨年の大鐘先達の百間滝詣りにも同行されており、道中をずっと撮影されていました。私は配信された映像も当時見ていました。実物の“山と仏”さんに会えて嬉しかったです。今回は撮影ではなく、修行に専念されるということでした!それはそれで素敵な御心意気です!
お勤めされているお寺も教えてくださって、ぜひ通った際は訪ねてくださいと話してくれました!絶対行きます!
こちらが“山と仏”さんが昨年撮影した、百間滝詣りの様子です。大鐘さんを始め、今回のメンバーである鬼頭さん、戸塚さん、早川さん、新田さん、市東さんが写っておられます。ぜひご覧ください!道中の大変さがよく表現されています。
ご縁に感謝
高野山とか真言宗とか、大峯奥駈道を歩いたなんて単語を聞くと、私としては内心ウキウキでした!
修験者さんと一緒に百間滝へ行けたなんて感激です!
今回高野山真言宗の方々を知り合いになれたのはとても恵まれました。いつか高野山の修行についてもお話が聞けたら嬉しいです。

天台寺門宗の早川浩詮さんは、私を「健脚〜!」と称賛してくれて終始明るい方でした。途中調子を少し崩されましたが、大鐘先達の加持祈祷により見事復活され歩ききりました。早川さんも法螺貝がとてもお上手で、高音部がトランペットを思わせる明るい音色をしていました。


い「もしかして山小屋でホルン吹いてた方なの?」
松「はいそうです!」
い「あーそうだったんだ!私、昔演奏してもらいましたよ!〇〇さんと一緒にいました」
松「あの時ですか!よく覚えています」
と話して下さったのは、黒明栄教会の“いっとく”さんでした。こうして話しかけてもらえるのは嬉しいです。ホルン演奏と小屋番をやっててよかったと思いました。

百間滝木曽教会の新田弘さんと市東真一さんとは、お話しするお時間がありませんでしたが、御嶽山に対する信仰の厚さを感じました。お二人の滝行は一番長かったように思います。



みなさま滝行本当にお疲れさまでした!お見事でした。

強力、倉本さんの存在
今回の百間滝詣りは、強力(案内役)はいませんでしたが、倉本さんなしには百間滝は語れませんので紹介いたします。(強力についてはこちら)
昨年は、強力の倉本豊さんの紹介で神蓮講さんの百間滝詣りに随行させていただきました。
(詳しくはこちら)倉本さんは、修行者のためにこの百間滝への道を毎年整備して下さってる方です。

倉本さんは、御嶽山の強力歴50年の傍ら、伊勢神宮への御神木を寝かせる(切る)杣夫でもあります。百間滝参りの数日前には、その御神木祭で杣夫を立派に努めあげておられました。なんとすごいお立場!
百間滝へ詣るにあたって、あらかじめ強力の倉本さんと会う機会がありました。倉本さんからは、昨年とは別の道、正確にはこれまで通れなかった元の道の存在を聞きました。「草を刈って整備したから、見つかったら通ってみて」と言われていました。
今回は大鐘さんが先達として案内の役割をしており、私は真後ろで少しそのお手伝いをしました。
元の道のことは昨年も倉本さんから聞いていて、場所もなんとなく覚えていましたので、大鐘さんと道を観察しながた下りていったら、その場所らしきところを見つけました。
偵察してみたものの、

たしかに草が刈ってありましたので間違いなさそうですが、かなり急斜面に見えました。どのようにこの先が繋がっているか全く分かりません。どうするか躊躇しましたが、倉本さんから聞いて気になっていたのもあり、私が偵察で下りてみることになりました。

下りれなくはないですが、足場は不安定で、硬い枯れ草が滑り、瓦礫も浮いていて正直危険に思いました。みなさんから見える位置ぎりぎりまで下りましたが、みなさんも、私が下りる姿を見て「無理め」と悟った様子だった気がします。昨年まで使っていた道が使えないわけではないので、戻ってその道を行くことになりました。

少し心残りでしたが、、、
倉本さんが整備して下さった道、せっかくなら通りたかったですが、その場所で本当に合っているかの確証がなく、間違いが許される場面ではないので諦めました。私にとっては初めてのメンバーですし、冒険はやめようと思いました。
私が無事元の場所へ這い上がると、再び昨年まで使っていた道を下り始めました。昨年、大鐘さんと鬼頭さんがザイルを張ったので、格段に下りやすくなりました。しかし、横移動の際に、足場を踏み抜いた方が後方にいたようで、やはり危険な道であると実感です。

進んでいくと、同じく草が刈られた場所との交差があり、倉本さんの道だと確認できました。帰路の際に私だけでも倉本さんの道を使っておけばよかったかなと、少し後悔しました。しかしこのような場所で滑落したらそれこそ救助は見込めないので、またいつか倉本さんと訪れることができたらと願いました。

感謝の気持ち
いつもご厚意で登山道を整備して下さっている倉本さん、本当にありがたい存在です。大鐘先達も、終わりに倉本さんへの感謝を述べており、みなさんにも倉本さんの存在を伝えていました。

大鐘先達との出会い
最後に、大鐘さんと出会ったきっかけを書いておきます。

4年前(2021年)
大鐘龍昇先達に初めて会ったのは、私が御嶽山の山小屋で働いていた時で、もうかれこれ4年前になります。大鐘さんは御嶽山でも有名な先達さんで、たびたび山小屋を利用してくださいました。

私は山小屋で働きながら、ホルンやミニ法螺貝を吹いていたのですが、ある朝大鐘さんと一緒に法螺貝を吹くことになったのがきっかけです。当時はまだ、山小屋仕事に慣れるのが精一杯でしたし、御嶽山のことも今のように深掘りしていなかったのでよく分からず、大鐘さんとはほとんど会話をしていませんでした。
2年前(2023年)


2年後、再び小屋でお会いした際も、あいさつ程度の会話しかしていませんでした。しかしその頃から私は、山でホルンを吹くことよりも、個人的に御嶽山に関わりたくなっていましたので、下山後に大鐘さんと連絡を取るようになりました。
山丸三の紋様についてや、御嶽山に祀られている神さまについてなど、大鐘さんは毎回快く情報提供してくださり、貴重な資料も使わせてくださいました。私が本ブログを立ち上げたのも、その直後になります。
大鐘先達については
ご覧あれ!大日如来像!
高針心願講の活動&功績!
牛王宝印とは何ぞや??もご覧ください。
念願叶って
大鐘さんが夏に限らず、御嶽山や木曽を訪ねてはお詣りや修行されていると聞いて、なんとか同席したく思い、たびたび日程を報せていただきました。しかしなかなか都合がつかず、1年以上の時が過ぎてしまいました。山小屋でもタイミングが合わず、入れ違いになったりしていましたが、その際も私へのお札や言葉を小屋に残して下さっていました。

そしてついに、大鐘さんとお会いできることが叶ったのが今回です。しかも百間滝という特別な地への随行です。昨年に続き、またも百間滝へ行けるなんて二重の喜びです。

どんな旅になったかは、[A面]をご覧ください。
おわりに

しつこいですが今回、修験者の方々とご一緒できたのはとても嬉しかったです。
みなさんとてもかっこよかった!(ミーハーですみません)
笠や杖、法具を間近で見せてもらって、高野山や吉野の話もできてとてもありがたかったです。

名残惜しい気持ちでしたが、ここでみなさんと出会えたことに感謝して、またいつかどこかでお会いできるのを楽しみにお別れしました。

大鐘龍昇先達、本当にありがとうございました。今後ともよろしくお願い申し上げます。次はぜひ御嶽山登拝にご一緒したいです。

出会ったみなさんから頂いたお力で、私はこの後、御嶽山へ登りました!
なんて贅沢?!ヘトヘトですよ(笑)


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