今回は、御嶽山の剣ヶ峰に祀られている大日如来像についてです!
この像、正確には【胎蔵界大日如来】と言います。昨年2023年に新しく奉納された像ですが、この像は一体何を表しているんでしょうか?
胎蔵界ってどこ?
そもそも大日如来って何??
これがまたまた複雑でした!上手く説明できるか分かりませんが、がんばります!
大日如来って何?
まず【大日如来】についてですが、これは真言密教の本尊にあたります。
入定の記事でも書きましたが、御嶽山は、真言密教の影響をとても受けているのです。
通常【〇〇如来】は質素な姿が多いですが、【大日如来】は宝冠や装飾をつけた(いわゆる菩薩のような)姿で宇宙を表現しているのが特徴です。そして、
- 【金剛界大日如来】
- 【胎蔵界大日如来】
と二つ存在します。わかりやすい違いは手の形で、【金剛界大日如来】は智拳印1、【胎蔵界大日如来】は法界定印2を組んでいます。
「大日岳」や「大日岩」など、「大日」と名のつく場所は他の山でも見られますね。全てこの【大日如来】から付けられた名前だとわかります。
胎蔵界とはナンジャラホイ?
では次に、【金剛界】と【胎蔵界】とは何でしょうか?
すごく簡単に説明すると、
- 【金剛界】は智慧の世界
- 【胎蔵界】は慈悲の世界
言葉にすると難しいのですが、わかりやすいイメージで例えてみました。
【金剛界】イメージまとめ
智慧 道理 意思 男性的 四角 直線 硬い ダイヤモンド(金剛石)
【胎蔵界】のイメージまとめ
慈悲 真理 受容 女性的 円形 曲線 柔らかい 蓮の花
密教には、この【金剛界】と【胎蔵界】という二つの世界観があり、曼荼羅(視覚化した図)で表されています。そして、二つでひとつという考えです。【両界】と言っています。
大日如来と御嶽山の関係
現在の御嶽山に祀られている主祭神は
【御嶽大神】(国常立尊・ 大己貴命・少彦名尊の三位一体)です。
この【御嶽大神】の前身は【御嶽山座王大権現】です。
【普寛行者】が【御嶽山座王大権現】を御嶽山に定着させ、【本地仏】は【胎蔵界大日如来】であると教え広めました。
ちなみにこのブログのロゴである山丸三の一本線も、【大日如来】を表しています。(詳しくは山丸三の仏さまたち-山丸三②-をご覧ください)
一応おさらいです。
【御嶽山座王大権現】は吉野の【金剛蔵王権現】が大元ですが、御嶽山におけるオリジナルの神さまです。
吉野【金剛蔵王権現】(本地仏:釈迦如来/十一面観音菩薩/弥勒菩薩)
↓(御嶽でオリジナル化)
木曽【御嶽山座王大権現】(本地仏:胎蔵界大日如来)
↓(神仏分離令の影響で変化)
現在【御嶽大神】国常立尊 / 大己貴命 / 少彦名命
権現と本地仏について詳しくは蔵王と座王で紹介してますが、
要約して載せます。
修験道の本尊は、【権現】である。
【権現】の意味は「仏が仮に(権に)神の姿を借りて現れた」
つまり、仏さまが神さまの姿のアバターで現れたという表現である。
そして元の仏の姿のことを「本地仏」と言う。
【蔵王権現】は青黒い憤怒姿、本地仏は 釈迦如来/十一面観音菩薩/弥勒菩薩(三体あるため)
【座王権現】は衣冠の貴人姿、本地仏は 胎蔵界大日如来
場所は剣ヶ峰!
【普寛行者】がなぜ、【御嶽山座王大権現】の本地仏を【胎蔵界大日如来】に定めたのか詳細は不明ですが、これにちなんで、剣ヶ峰には【胎蔵界大日如来】像が建立されたわけですね。
御嶽山に登った際は、剣ヶ峰の【胎蔵界大日如来】像をぜひご覧ください!一番大きい像【白川権現】の横に坐像があります。
異議あり!白川大神は後付け?でさんざん書きましたが、
この【白川権現】も本来は【御嶽山座王大権現】だと考えると、二体並んでいるのがとても自然に見えてきます!(権現と本地仏!)
実はこの大日如来像は、昨年奉納されたばかり!
建立に尽力されたのは名古屋市に所在する高針心願講の、大鐘龍昇先達です。大鐘さんには個人的にも大変お世話になっており、このブログ内でもいくつもの資料を提供していただいています。建立の経緯については次回記事に詳しく紹介したいと思います!
剣ヶ峰の大日如来像は優しい慈悲を表すお顔(まさしく胎蔵界!)をしています。意味や経緯がわかると、手を合わせる気持ちも変わってきますし、とてもありがたいですよね。
改めて、大鐘先達はじめ高針心願講社の方々、協力者の方々にお礼と感謝を申し上げます。
参考文献:
「御嶽山王滝口 信仰資料拝見記」王滝口 御嶽神社/御嶽教滋賀大教会
「御嶽の歴史」(生駒勘七)
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