木曽の御嶽山は、火山・高山・霊山と三拍子そろっていて、その魅力は御嶽古道や滝、火口湖や高山植物とキリがありませんが、私は特に岩が好きなので、今回は板状節理がある場所について紹介したいと思います。
板状節理は、柱状節理ほど取り上げられる機会は少ないですが、
岩がまな板や本のように積み重なって見える様子は大変不思議で面白いです。
そして柱状節理と違って、破片を手に取ってみることができるのが魅力です。
この板状節理は、王滝の里宮にも見られますが、
もっとも顕著に表れているのは、新滝の岩壁だと思います。
ここの岩壁一体には見事な板状節理ができており、目の高さで実際に触って確認することができます。
節理は隙間に水を蓄えやすいので、冬場はこの板状の隙間から染み出した水が氷って、氷瀑と一体化する姿は圧巻です。
板状節理が、どのようにして形成されるのかは、実のところはっきりしていませんが、
溶岩の流れた面に対して、平行に節理ができること。
溶岩が流れた方向を表していること。
そしてその溶岩が高熱で、流動性があるうちに形成されている。
ということがわかっています。
併せて、溶岩に気体や泡が少ない場合、膨張が起こらないので柱状節理はできず、
この場所のように板状節理のみ発達するそうです。
今後さらに研究が進めばと思いますが、
御嶽山の溶岩がもたらした、板状節理の岩壁と滝を見るだけでもワクワクしますね。
この場所は、御嶽山に登らなくても、御嶽山を感じて楽しめる素晴らしい場所だと思います。
そして、このような板状節理が、御嶽山の山頂部でも見られる場所があります。
そこは私が今、1番気になっている場所です。
五の池から継子岳を周回するルート上にあります。
五の池小屋から時計回りに継子岳へ向かう登山道ですが、イザナギとイザナミの石碑を過ぎて、継子岳の山頂手前に、大きな岩の露頭があります。
この岩の露頭は、薄い岩の礫でできています。侵食が進んでいますが、私はこれも板状節理であると考えます。
足元には厚さ約2、3cmの平べったい破片がパラパラと落ちており、手に取ると平面平行な断面に夢中になりました。
この破片は、王滝に落ちている破片と同じような、質感と厚みです。
実際に、王滝とこの継子岳の地質は同じ安山岩ですが、時代は約30万年以上の差があるようです。
御嶽山は古記(約78万年前〜約40万年前)と新期(約10万年前〜現在)の火山二階建て構造になっているためです。
この二つの板状節理を見ると、地球の果てしない歴史も感じることができますね。
この継子岳から四の池を周回するコースは、コマクサの群落や四の池の湿原で大変美しくて、敢えてあげる必要がないくらいの場所です。
これらの素晴らしさは言うまでもありませんが、
一緒に岩や地形を見ていくと、さらに魅力が出てくると思います。
また、継子岳Ⅱ峰を過ぎて四の池に下りる地点には、東西に岩脈が走っているのを写真で確認することができます。
この岩脈は、雪が積もるとより一層はっきり見えます。この岩脈が板状節理と関係があるのか、御嶽山で板状節理が見られる場所は他にあるのか、今後探っていきたいと思っております。
以上、私が御嶽山を歩いている中で、印象的な場所を紹介しました。