「すべての【御嶽山(御岳山)】のルーツは【金峯山寺】の【金剛蔵王権現】である」と、
御嶽山のルーツで明言しました。
もっと大きい括りで言うと、
全国の【御嶽山(御岳山)】を含む全ての修験道のルーツが【金峯山寺】にあると言ってよいです。
今回はその【金峯山寺】の【金剛蔵王権現】についての記事です。
まずこの【金剛蔵王権現】について知らないと、【木曽の御嶽山】に祀られている【御嶽山座王大権現】との違いを説明できないからです。
そう今回は、「蔵王と座王の違い」を解くための布石と思ってください。
【金剛蔵王権現】について説明がいらない方は
こちらをどうぞ↓
【蔵王と座王】見た目が違う?
なぜ変わった?蔵王→座王へ!
まずは、復習です。
【金峯山寺】修験道発祥の地であり、総本山
別名:【金の御嶽】
場所:奈良県吉野郡
指定:国宝
開祖:役行者
本尊:【金剛蔵王権現】
主な勧請先:
【蔵王】山形県の百名山
【御岳山】東京都青梅市
【金峰山】山梨県の百名山(別名 【甲州御岳山】)
そしてもちろん、【木曽の御嶽山】にも勧請(分霊)されています。
今回は、もっと詳しく解説します。
役行者が【金剛蔵王権現】を感得したと言われる場所について
正確には【山上ヶ岳】と言われている山です。【山上ヶ岳】は奈良県にまたがる大峯山脈の一つで今現在も女人禁制を強いている山です。
【金剛蔵王権現】を秘仏として祀っている【金峯山寺】の山上、というところから【山上ヶ岳】もしくは代表して【大峯山】とも呼ばれています。ここには【金峯山寺】に対して【大峯山寺】という修行者たちのお寺もあるそうです。
感得とは、悟り知ることを指し、この場所で役行者は一千日の修行の末に【金剛蔵王権現】を見出したと言われています。役行者が三十八歳のときだといいます。
吉野山と【金峯山寺】について
この奈良県吉野郡にある【金峯山寺】一体は、吉野山とも呼ばれており、桜の名所でもあります。この吉野山から、大峯山脈へ続き、和歌山県の熊野へ至る道は、【大峯奥駈道】と呼ばれています。
【金峯山寺】には【金剛蔵王権現】が祀られていると言いました。正確には【金峯山寺】の本堂である【蔵王堂】に【金剛蔵王権現】像は三体あります。
【金剛蔵王権現】の姿について
【金剛蔵王権現】像は、過去・現在・未来を表すとして三体あります。どれも高さが6メートル前後あり、秘仏本尊としては日本最大です。その姿は一見恐ろしく、見るものを圧倒します。ここ数年の間、ご開帳は春に行われており、目にすることが叶います。
その姿は一面三目二臂(顔がひとつ、眼が三つ、腕が二本)、青黒い憤怒の相で頭に三鈷冠を頂き、左手は剣印、右手は三鈷杵を持って頭上に上げ、左足は盤石を踏み、右足は空中を踏むという恐ろしいものでした。
「山の神さま・仏さま」太田昭彦
憤怒の形相とは、怒りに満ちた恐ろしい姿ですが、これは悪魔を降伏させるためのお姿です。
そして青黒いお姿は慈悲の心を表しています。
両手の武器や剣印で悪魔を粉砕するのです。
左足でも悪魔を押さえつけ、右足では悪魔を追い払っています。
ここでいう悪魔とは、災厄や煩悩を指しています。つまり【金剛蔵王権現】は、そういった悪魔を追い払うとともに、「恕」という「ゆるす」「いつくしむ」という優しさも持ち合わせた姿なんです。
【金剛蔵王権現こんごうざおうごんげん】という名前について
【金剛】とは、絶対に壊れることのない、輝きを失わず、最強のものを意味します。宝石のダイアモンドは和名を「金剛石」と言ったり、また弘法大師 空海の別名を「南無大師遍照金剛」とも言います。
【蔵王】とは、不滅の真理、究極を司どる、という意味があるそうです。
そして【権現】の意味が重要なんですが、これは「仏が仮に(権に)神の姿を借りて現れた」という意味があります。そして元の仏の姿のことを「本地」と言います。
つまり【権現】とは、仏さまが、神さまの姿のアバターで現れたという表現になります。修験道はそもそも【神仏習合】(神と仏は一体という考え方)なので、修験道の本尊は、神さまであり仏さまである【権現】なのです。
先ほど、【金剛蔵王権現】像は三体あると言いましたが、それぞれの「本地」は、過去/釈迦如来・現在/十一面観音菩薩・未来/弥勒菩薩であるというわけです。
修験道も権現も純日本製
修験道の定義として次が上げられます。
①山そのものをご本尊とする「山の宗教」である。
②山を教室として学ぶ山伏達の「実践的宗教」である。
③神仏習合であり、本尊が権現である。
④在家の(出家しなくても良い)宗教である。
このように、そもそも修験道や神仏習合、権現が日本という国から生まれたという特徴があります。
そして何より【金剛蔵王権現】も純日本製の本尊です。仏さまや、日本人の好きな弁天様などの神さまも、元は渡来して日本へ伝わった存在ですが、【金剛蔵王権現】は生粋の日本生まれなんですね。
まとめとキーワード
【金剛蔵王権現】について、少しは理解できたでしょうか?修験道の発展とともに、この【金剛蔵王権現】が【木曽の御嶽山】へも勧請されます。
その後、【木曽の御嶽山】の蔵王信仰は独自の変容を遂げるのですが、
それは次の記事、
【蔵王と座王】見た目が違う?
なぜ変わった?蔵王→座王へ!でご堪能ください。
今回のキーワードはたくさんありましたので、列挙しておきます。
【役行者】【金峯山寺】【金剛蔵王権現】【蔵王堂】【山上ヶ岳】【大峯山】【大峯山寺】【大峯奥駈道】【吉野】【金剛】【蔵王】【権現】【金の御嶽】
【勧請】【神仏習合】【本地】
どれも、【御嶽山(御岳山)】を語る上で外せないキーワードです。
以上参考文献は、
「修験道入門」田中利典
「山の神さま・仏さま」太田昭彦
「週刊 仏教神発見!金峯山寺」朝日新聞出版 より
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