前回記事、明治(神仏分離令)以前の御嶽【御影図】の紹介に続き、今回はその現代ver.をお届けします!どちらも、御嶽山を象徴する神さま方をイメージしやすくするために図像化されたものです。
写真は、現在の御嶽山に祀られている諸神仏を表した掛け軸です。ここではこの掛け軸を【御嶽神霊軸】(以下【神霊軸】)と呼ぶことにします。この【神霊軸】は御嶽神社で購入出来ますし、御嶽山の山小屋などにも掛けられています。この掛け軸に描かれている神さま仏さま霊神さまを紹介したいと思います。
私も初見では誰が誰か全部は分からなかったんですが、王滝の御嶽神社が資料と併せて教えてくれました。
最上部「大神(普遍的)」
一番上から階層ごとに見ていきましょう。まず最上部です。
まず中心の三方が、【御嶽大神】の三神である【国常立尊】【大己貴命】【少彦名命】
御嶽山において最高の神霊として位置付けられています。
そして両端に【伊弉諾尊】【伊弉冊尊】いわゆるイザナギとイザナミで、共に国産みの神と言われる日本の神さまです。
すでに何度も述べていることですが、
【御嶽大神】は【御嶽山座王大権現】が【神仏分離令】によって置き換えられた存在です。
【伊弉諾尊】は【伊邪那岐尊】とも書き、御嶽山では【金剛童子】として祀られています。
【伊弉冊尊】は【伊邪那美命】とも書き、御嶽山では【大江権現】として祀られています。
これらの神さまは、古来より日本神話に登場し、御嶽の枠をこえて広く信仰されている普遍的な神々です。そしてこの最上部は、明治以降に付け加えられたというのが最大の特徴です。
中央部「諸神仏(選択的)」
次に中央部上段と行きたいところですが、訳ありのため最後に紹介します。
訳あり?のため最後に紹介!
というわけで、先に中央部中段行きます。
まず中央が【十二大権現】で、【木花之佐久夜毘売】を祀っています。【木花咲耶姫】とも書きます。【普寛行者】が富士山から勧請して習合したと言われています。安産や子授けの神さまです。
向かって左が、【摩利支天尊】で、山丸三の仏さまたち-山丸三②-でも紹介していますね。
【御嶽山座王大権現】の一部であるという説や、御嶽信者の儀式である【御座】の守り神としても扱われています。御嶽山の各所に祀られており、非常に重要な神さまです。
向かって右が、【八大龍王尊】といい、水を司どるの神さまです。麓の八海山神社にも祀られています。御嶽山は水が豊かで、山頂の池にもそれぞれ龍が棲むと言われています。御嶽山と龍神は深い関係にあるかもしれませんね。
続いて、中央部下段です。
中心が【不動尊】正式名称【清滝大日大聖不動明王】で、山岳信仰を代表する仏さまです。滝には必ずと言って良いほど、お不動さまが祀られています。
脇侍には、【不動明王】の眷属と言われている【八大童子】です。
向かって左が【制吒迦童子】象徴物は金剛棒で、強さを表す男性的な描かれ方ですね。
向かって右が【矜羯羅童子】象徴物は蓮で、慈悲を表す女性的な描かれ方をしています。
この二人は八大童子の中で代表的な存在です。
この中央部下段は、初期の【御影図】からずっと描かれている、御嶽山の重鎮さんたちです。不動明王とその眷属である八大童子は、山岳信仰が盛んで滝も豊かな御嶽山にとって、重要な存在であると分かりますね。
総じてこの中央ブロックは、諸神仏と呼ばれます。御嶽以外にも通じる神霊ですが、特に御嶽の特定の場所を守護する神霊として、あるいは機能神として性格づけられて祀られ、崇拝されています。時や場所に応じた、選択的な神さまと言えます。
最下部「霊神(個別的)」
最下部には、実在の行者がその死後に神霊化された諸霊神が配置されています。
この4人は御嶽山の【四大講祖】と呼ばれ、御嶽の開山とその弟子として各講社の人々に崇拝されてきました。全ての御嶽講は、【四大講祖】いずれかの系譜を辿ることができます。
特定の講社や個人など、比較的狭い範囲に通じる個別的な神霊として描かれています。
【覚明霊神】は御嶽開山の祖と言われています。頭陀袋と、右手に持っている五鈷鈴が特徴的ですね。
【普寛霊神】は御嶽開闢の祖と言われています。
【一心霊神】と【一山霊神】は【普寛行者】の弟子に当たります。
「開山」と「開闢」の違いや、なぜ【覚明行者】の弟子は入っていないのか?
など詳しくは、こちら覚明行者にはお弟子さんがいない?
まとめ
御嶽山の神霊感は、
最上部ー大神(普遍的)
【国常立尊】
【大己貴命】
【少彦名命】
【伊弉諾尊】
【伊弉冊尊】
中央部ー諸神仏(選択的)
【十二大権現】
【摩利支天尊】
【八大龍王尊】
【大日大聖不動明王】
【制吒迦童子】
【矜羯羅童子】
最下部ー霊神(個別的)
【覚明霊神】
【普寛霊神】
【一心霊神】
【一山霊神】
といった三つの区分から構成されているとみることができます。
中央部上段に異議あり!?
そして最後に!!
忘れてませんよ!訳ありの中央部上段です!
この神さまたちは、
【三笠山大神(豊斟渟尊)刀利天宮】
【白川大神】
【八海山大神(国狭槌尊)堤頭羅神王】と紹介されてました。
御嶽神社で宮司さんが見せてくださった資料も、書籍「木曽のおんたけさん」にも同様に載っています。
私はここで手を挙げたいと思います!
「異議あり!!」
続きは次の回で詳しく行きましょう!
参考文献:「木曽のおんたけさん」(執筆編集代表 菅原壽清)
写真提供:御嶽神社 王滝口
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