いざ【百間滝】滝行へ随行!

今回は御嶽山の最大秘瀑【百間滝】への随行ずいこうした際の詳細記録です。

季節は6月、
時刻は朝の6時15分、
御嶽山の六合登山口である中の湯駐車場へ到着しました。
強力ごうりき】をかれこれ40年以上も努める男性が一緒です。現在、彼は御嶽山で現存するただ一人の【強力ごうりき】と言っていいでしょう。
その後、今回私と同じく同行を許可された男女が3人到着。それぞれ御嶽山火山マイスターの同士であり、小屋でも一緒に働いたことある旧知の同僚たちです。

そこに、今回滝行でおもむく【御嶽講】のご一行が到着されました。
約15名ほどでしょうか、驚いたのは思ったより女性が多く、また若い男性も見えたことです。

強力ごうりきさんが、今回の先達せんだつさんに私たちを紹介してくださいました。
先達さんには、とてもにこやかにお話ししていただき、とても嬉しく思いました。

その後出発、
時刻は6時50分。
先頭は強力ごうりきさん、先達せんだつさん、その後、信者さんが続き、最後尾に随行者である私を含めた4名が付いて歩き始めました。強力ごうりきは案内含め、信者さんの荷物を担ぐこともありますが、今回は滝行の軽装のため、案内のみだと伺いました。それに、百間滝ひゃっけんたき】への道は谷へ下る道のため、背負子や荷物を担ぐと危険なんだ、とも言われました。強力さんは、鎌で道を切り開きながら、危険箇所はないか終始チェックして進んでいきます。

歩きやすい登山道です
一番水量が多かった沢です

まずは、百間滝小屋がある場所まで、整備された登山道を約一時間半歩きます。一度谷へ下りて、四つの沢を越え、また登り返します。四つのうち三つの沢はれておりました。一つだけ増水した沢では、信者さんが安全に渡れるように、強力さんはサポートに徹底していました。

途中、イワカガミやゴゼンタチバナ、ユキザサなどの山野草を楽しみながら、進みます。ところどころ先達さんの法螺貝が響いて雰囲気が出ます。
先達せんだつさんは
「法螺貝はね、喉で鳴らすんだよ。楽器とは少し違うんだよね」
と話してくださり、私もなるほどなあと実感しました。

マイヅルソウ
ゴゼンタチバナと虫が光る

8時23分、百間滝小屋へ到着しました。今日は天気もよく展望所から見える【百間滝ひゃっけんたき】は圧巻の迫力です。
「皆さん晴れ男&晴れ女でよかったね!」
強力ごうりきさんもにこやかです。信者さんたちも嬉しそうに写真を撮っていました。

百間滝は御嶽山に抱き抱えられているようです
遠く名もない滝もたくさんあるそうです
王滝頂上も確認できました

ここでしばし休憩したのち、遥拝所でのお勤めを拝見しました。私に分かったのは「般若心経」「不動明王のご真言」「光明真言」でしたが、他にも様々なお経や真言が述べられていました。

金色の飛沫をあげていました

ではそろそろ出発しようか、と言うその時です!
強力ごうりきさんが
「滝が金色に光ってる!」
と言うのです。
みんな一斉に滝へ視線を移します。
遠く見える【百間滝ひゃっけんたき】の水飛沫みずしぶきが、金色に光って見えるのです。
虹色になるのはわかりますが、金色の水飛沫みずしぶきは初めて見ました。
「後ろの岩盤が赤茶色いのと、太陽の光の関係、それと水量がちょうどいいんだろうね!それで今だけちょうど金色に見えるんだ!私も長年ここへ通っているが、初めて見たよ!すごいね!」
強力ごうりきさんも興奮気味に話してくれます。
信者さん方も、ありがたいと手を合わせていました。
金色の水飛沫みずしぶきはたった数分の出来事でした。

遠く木々の間に見える百間滝

9時25分、行動再開です。ここからは地図にも載っていない道を辿ります。
いきなり、「え?!ここ下りるんですか?!」と言う道でした。
ですが、強力ごうりきさんが今回のために事前に整備してくださっていたので、信頼して歩けました。もちろん困難な箇所はいくつもあり、山歩きになれない信者さんや高齢の方は苦労されてましたが、ゆっくりゆっくり下って進んで行きました。梯子やロープも掛けられています。長蛇の列になりながらも、強力ごうりきさんはその都度、最後尾の私たちにも声掛けや説明をしてくれて、頼もしかったです。

真下に降りていく感じですね
強力さんが掛けてくれた梯子、ありがたいです。
岩壁も迫力あります
岩窟を横切りつつ、進みます


10時05分、ものすごい岩壁や、深い谷を見ながら、時折鳥の鳴き声に癒されつつ、進んでいくと、岩窟が見えてきました。ここでも、信者さんたちが勤行されます。かつての行者たちも、ここで修行していました。

百間滝岩窟 開山覚明行者御修行之旧蹟

かの【覚明行者】もここで修行していたことが伺えますね。

ここでもお勤めを見学します

10時40分、ついに【百間滝ひゃっけんたき】へ到着しました。その姿と言ったら、神々しくて涙が溢れてきました。
ずっと最後尾を歩いていた私たちでしたが、先ほどのお堂でのお勤め後に、順序が入れ替わってしまったのもあり、先頭で【百間滝ひゃっけんたき】と合間見える形になりました!

ついに辿り着いた百間滝です
神々しい迫力と感動で涙が出ました

到着後はそれぞれに写真を撮る者、滝へ近づく者、見惚れる者と達成感を味わっていました。
私はというと、滝の岩盤へ吸い寄せられるように近づいて触っていました。
見事な柱状節理ができており、また不思議な曲がり方をしていたのでワクワクしました。

素晴らしい節理です
ここの節理は方状、四角いのが特徴
滝の右側は湾曲してます
長年、滝が削り続けることによって現れた節理
意外と滝壺が浅い百間滝

百間滝ひゃっけんたき】は、水量がものすごく多い割には滝壺が浅いことに気づきました。
これだけの水量で直瀑ならばもっと深い滝壺ができるはずですが、
「御嶽山は火山で、空洞が多いから、水はほとんど地面へ抜けてしまうんだ。だから沢の水も少なくて涸れてたでしょう?」と、強力ごうりきさんが教えてくれました。
そうか、だから滝行もできるのか!

10時55分、いよいよ滝行の開始です。
男性信者はフンドシ一丁、女性信者は白装束に着替えていました。
安心したのは、皆さん靴を履いていたことです。
聞くと、以前は素足やサンダルだったが、水量によっては滑ったりと危険があったため、靴を履くようになったとのことです。ただ過酷なだけじゃなく、危険意識を持って臨まれてるのは、逆に素晴らしいと感じました。

 実際の滝行は公開することはできませんので、私からの感想しか述べられません。
 ですが、想いは残そうと思いました。
 あんな水量の直瀑の滝を直に受けるなんて、実際に見るまでは信じられませんでした。
 遠く撮影見学していた自分でさえ、びしょ濡れになるほどの水飛沫なんです。
 六月とはいえ、震える寒さです。
 信者さんたちの読経の声と、滝の轟音が混ざり合って、迫力がすごい。
 そして、信者さんたちの気迫と、震える体からは過酷さが伝わってきて、
 涙が溢れてきました。
 滝行を終えて、女性方が脱いだ白装束を絞っていましたが、
 寒さで手がかじかんでいたのを見て、手伝うことにしました。
 水を含んだままだと重いし、帰りが大変だと思い、
 少しでも手伝いたい気持ちが湧きました。

そうして落ち着いた頃、
一緒に今回同行した火山マイスターの女性が、
「見て!カモシカの親子!」と声を上げます。

百間滝の真裏をカモシカ親子が通過する
こちらを見つめるカモシカ親子

11時25分、見上げると、なんと百間滝ひゃっけんたき】の裏側の崖にカモシカの親子が現れました。そしてそのまま百間滝の裏側と悠々と通過していくのです。通過した後も、何度もこちらを気にして見つめながらも、ゆっくりゆっくり進んでまた崖へ上がって行きました。カモシカの子供はまだ生後1ヶ月ほどかというくらいの小さな小さな仔で、とても可愛らしく、母親の足元へなんとか隠れようと必死なのがまた愛くるしかったです。

必死に母親についていく子ども

強力ごうりきさんは
「あの滝の裏側に獣道があるのは知っていて、滝の真後ろも通れそうだなあと思ってはいたけど、、、実際に通ったのは初めて見た!!今日はほんとに驚きの連続だね!!初めて続きだよ!」
と嬉しそうに話してくれました。

休憩を取ったのち、
12時00分、帰路へ着きます。滝とは名残惜しいですが、感謝してお別れです。
13時00分、百間滝小屋へ戻り、ふたたびお勤めと休憩したのち、登山道へ入ります。
14時40分、中の湯登山口へ帰ってきました。

先達せんだつさんにも、滝行の後少しお話を聞くことができました。
「今日はね、まだ水量は少なかったよ。去年の方が多くて、腰まで水があったからね。今日も多く見えるけど、よく見ると全部飛沫しぶきになっているんだ。水滴ね。水が全部そのまま上から(蛇口みたいに)繋がっている時はすごく危険なんだ。滝行はその見極めも大事なんだよ」
聞いて納得したものの、今日で水量少ないのか、、、驚愕です。
本当に貴重なお話をありがとうございます。

信者さんたちも、今回の滝行では金色に光る滝や、カモシカの親子との遭遇という貴重な体験ができたようで、大変喜び満足されていました。また、私たち同行者が写した写真や動画も欲しいと言っていただき、後日送ることになりました。
先達さんからは、
「自分の滝行を見ることはできないし、撮影される機会もないから初めてで嬉しい」とお言葉をいただけました。こちらとしても同行の甲斐あって喜ばしいですね。先達始め、皆さん、快くお話ししてくれてとても嬉しかったです。

今回の同行を快く許可してくれた【御嶽講】の方々と、強力ごうりきさんにお礼を言ってお別れしました。
同行者の3人とも、一緒に感動を分かち合えてとても嬉しかったです。
貴重な体験を本当にありがとうございました。
また御山で会いましょう!

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